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2024.3.18 10:42新刊情報

恐ろしいけれど頁を開かずにはいられない『夫婦の絆』第12話感想

現在発売中、FLASH3月26日・4月2日合併号掲載
『夫婦の絆』第12話、まいこさんの感想を
「世界のゴー宣ファンサイト」からご紹介します!

 


 

3人同棲を永遠に続ける方法が明かされた第12話。

生死の境を飛び越える際の、コンマ1秒で為した活劇からも、一郎の記憶喪失の原因が示されました。

 

第11話で、沙耶が惨劇の舞台を帝国ホテル最寄の日比谷駅に選んだと知ったとき、ライトの建築を愛した三島由紀夫の言葉を想起しており、今回は、彼が命を賭しても求めてやまなかった真理を、数十年ぶりに描き出してくださったようにも感じました。

 

「この本は私が今までそこに住んでゐた死の領域へ遺さうとする遺書だ。この本を書くことは私にとつて裏返しの自殺だ。飛込自殺を映画にとつてフィルムを逆にまはすと、猛烈な速度で谷底から崖の上へ自殺者が飛び上つて生き返る。この本を書くことによつて私が試みたのは、さういふ生の回復術である。『仮面の告白』ノート」

痛快な呵々大笑を響かせる沙耶は、晴れて時空間を自由に行き来できる亡霊となり、「死の領域」にありながらも「生の回復術」を成功させてしまった歓喜を沸騰させています。

 

命の真理が彫り込まれた見開きは黒一色で描かれたとは信じられない迦陵頻伽が舞踊るごとくの煌びやかさ、これぞノワールの奇蹟だと思います。

 

「残留思念を残すこと自体が恐るべき苦痛を抱え込む」にも関わらず「無への帰還」たる成仏をしないのは

「私が蜜子にしてやれることは、亡霊となって見守ることしかないから!」

という強い動機からで、母性とは何であるかということも考えさせられました。

第6話での蜜子の母の「あんた、殺されるよ」、第10話での沙耶の母の「殺されたのは計画通り」は、読者の間で大いに物議を醸した問題発言であり、母性に対してどのような幻想を抱いているかを炙り出す試金石ともなりました。

 

沙耶が美しき肉体という檻から逃れ、蜜子を守ることも母性の発露であるとすれば、肉体を分かち生を与える麗しき愛と同時に、生殺与奪権を完全に握り締めた支配欲も強く感じます。

 

蹂躙され続けたものの復讐としても成し遂げられた亡霊によって続いてゆく3人同棲は、第1話で示唆された「長い長い悪夢」に繋がってゆくのでしょうか。

 

恐ろしいけれど頁を開かずにはいられない『夫婦の絆』を読める愉楽に浸りつつ、次回を待ち焦がれております。

 

 


 

 

生と死とは、善と悪とは、そして母性とは、
人間の抱えるありとあらゆる物事に関して
あまりにも濃密な思いを巻き起こしつつ、
物語はさらなるクライマックスへと向かいます!

次回は4月23日発売号に掲載予定!

 

トッキー

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